ふしぎーく!

博物館のカエルが語る、民俗系よもやま話

騙された~っ! 神無月の妖怪の話

こんにちは、デンカです。

 

10月と言えば神無月。神無月と言えば日本中の神様が出雲大社に集まる月だと言われています。つまり、日本の一部を除いて神様がいなくなってしまう恐ろしい月!w

 ……とはいえ、子どもだったころのデンカはそれを聞いても「へぇ~」くらいにしか思っていませんでした。「不思議な話があるもんだなぁ」で翌日には忘れている。

ところが。かの有名な寺田寅彦の警句、「天災は忘れたころにやってくる」のごとく、「妖怪は忘れたころにやってきた」のであります……。

 

その妖怪は期間限定だった

 

 突然ですが、あなたは不思議な話や怪談が好きですか?

いやいや、NOとは言わせませんよ。このブログに来てくれたからには相当の好き者とお見受けします。……そう、子どものころは図書館から妖怪事典を借りてきて、わくわくしながら読んだクチじゃあございませんか?

かく言うデンカも妖怪事典がそれはそれは大好きな子どもでした。特に水木しげるは小学生の強い味方。入門編にはうってつけです。

わくわくしながらページをめくり、「油すまし、顔怖い」とか、「がしゃどくろ、単にどくろが大きくなっただけなのにかっこいい」とかやっていますと、あるページで自然と指が止まってしまいました。なぜならそこに、デンカの興味をひどく惹きつける妖怪が載っていたからです。

その名も「紙舞(かみまい)」。

くわしく説明すると、風もないのにヒラヒラと紙が舞い始め、それを放っておくと最後には家の中のあらゆるものが飛び回るという、迷惑千万な妖怪でした。

しかも、不思議なことに10月しか起こらないと言うんです。

まぁ、普段なら「ふぅん?」で済むお話なんですが、折しも時は10月。おまけにふと思い出してしまったんです。10月は神無月。神様がいない月。だからこんな怖いことが起こってもなんの不思議もないと。

さぁ、デンカは完全にガクブルです。自分の部屋の紙がいきなり舞いだしたらどうしようっ!?

当時おバカな小学生だった私は本当に怖くて……。自分の部屋に置いてあるものが勝手に舞いだすってところに身近な恐怖を感じてしまったんです。

学校から帰ってきたらひとりで留守番していることも多かったので、ひたすら「10月よ、早く終われ!」と念じる毎日w

そうして私の恐怖の10月は過ぎていったのでした……。

 

ところがどっこい

 

月日は流れ、とりあえず分別のある大人になった(かもしれない)デンカは紙舞など恐れなくなりました。で、あるとき小説家の知人とおしゃべりに花を咲かせていときのこと。

 

「そうそう、私、子どものころ紙舞が怖くてね~」と言ったら盛大に吹き出されて、

「あんなの信じてたの? あれ、創作妖怪だよ!」

「…………はぁ?」

 

そう、こっちは「はぁ?」ですよ!

水木センセイの妖怪は地方の民話とか伝説とかきちんと裏が取れてるモノ使ってると信じてたから!

「じゃあいったい誰が創ったのよ!」と聞いたら、以下、ながーい説明をされました。

 

・昭和のはじめ、藤沢衛彦という民俗学者が『妖怪画談全集』なるものを書いた。その中で神無月に紙がひとりでに舞い飛ぶ怪現象を紹介している。

・それを元に『妖怪魔神精霊の世界』という本を書いた人が「これは紙舞という妖怪の仕業である」と勝手に名前を付けてしまった

・それを読んだ水木センセイがさらに……というものすごい連想ゲームw

  

しかもしかも。そもそもの『妖怪画談全集』に載ってるのは『稲生物怪録』の鼻紙が飛ぶシーンで妖怪の名前等一切なし。しかも季節は7月。

……って、はじめっから事実無根の大ウソやんけ! 何が神無月に紙が舞うだ! 本気で怯えた小学生の私に謝れぇええええぇえっ!! 

ちなみに以下が話の発端となった絵です。

 

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くそ、平太郎め、そんな涼しい顔して座りやがって!

『稲生物怪録』って妖怪に出会った少年の実話として有名ですよね。私は平太郎のようなSAN値の高い人間でないことがこの一件でよぅくわかりました……。

 

というわけで、結論&考察。

 

まんまと騙されたデンカでしたが、く、悔しくなんかないんだからねっ! と何故かツンデレ風に言ってみます。(いや、本当はすごく恥ずかしいし悔しい)

あと、名前って強いなとも思いました。「勝手に紙がひらひら舞う」という現象に「紙舞」って名前をつけるとそのモノが持つ存在感が格段に変わるんです。

名前がついている=存在を認知されたってことですから。

これで思い出すのが鬼才・諸星大二郎の『魔障ケ岳』と天才・冨樫義博の『レベルE』の高校野球地区予選編。両方読んで「このふたりとんでもないな……」と改めて思いましたもん。まだの人は絶対に損しないので一読をオススメします。

――というわけで、10月でも紙は舞ったりしないので、何も恐れずのんびりまったりいこうと思います(*^▽^*)