ふしぎーく!

博物館のカエルが語る、民俗系よもやま話

蒼前神ってどんな神様? ~なぜ馬はアオというのか~

こんにちは、デンカです。

 

……犬も歩けば棒にあたる。

デンカも歩けば奇妙な石碑にぶちあたる。

というわけで、今回は蒼前神(そうぜんしん)という珍しい神様のお話です。

 

正月の山中に、謎の神様を発見。

 

話せば長いことながら、某年1月1日のお昼過ぎ、デンカはひとり寂しく栃木県の某国道を歩いておりました。

左手は谷、右手は山。ところどころ雪が残る山肌はいかにも寂しく、自動車はおろか人通りすらありません。

 つい1週間前まで「わーい、大晦日から温泉だ~!」と浮かれていたのに、やむにやまれぬ事情のため(仕事が終わらなかったとも言う)、私ひとりが1日遅れで宿への道を歩くことになったのです。

 

ま、長い人生いろんなことがあるもんさ~。

 

人がいなけりゃいないで妙な解放感があるというもの。鼻歌なんぞを歌いながら10分ほど歩いたころでしょうか?

道の左にこんもりとした土盛りが見え、そこに石碑が建っているのに気がつきました。

 

 

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なんだこれ?

こういうものを見たら最後、黙って通り過ぎることができない因果な体質のデンカ。迷わず駆け寄ります。

 

石碑に彫られていた動物は?

 

村外れにある石碑といったら道祖神がメジャー。ですが、こちらはかなり変わっていました。

じゃーん。

 

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え? これじゃわかりづらい? だったら彫られてる文字にイラストソフトで墨を重ねてみるよ! えい!

 

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 勝善神(しょうぜんしん)……と読めなくもない? 二文字目が達筆過ぎてわけわかめ。でもたぶん善。「勝つ」に「善い」とか、こいつぁ春から縁起がいいぜ!

もひとつおまけにこちらもほい。

 

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 馬力神!

こちらはものすごくストレートな名前です。絵馬らしきものも彫ってあって、馬の神様なのは一目瞭然。

 

勝善神(しょうぜんしん)をさらにくわしく!

 

さて、この勝善神、気になったのでくわしく調べてみることにしました。

すると、北関東から東北にかけて信仰された馬の神様だということが判明。

「相染」「総善」とも書き、中でも一般的な表記が「蒼前(そうぜん)」。(「しょうぜん」は「そうぜん」が訛ったものらしい)

 

ここで「ふーん、なるほどね」と素直に納得できるほどデンカは人間できていません。かなりねちっこいです。

 

  • 神様の名前、「蒼前」は何から来てるの?
  • 「蒼(あお)」い「前(まえ)」ってどういう意味? わけわかんないよ!

 

……と、悩んでいたら気づいたことが。

昔話でよく聞く馬の名前は「アオ」。もしやそこから来てない?

で、調べてみたらヒットしましたよ!

馬の毛色に「青毛」なるものがあり、真っ黒な体毛をあらわすんだとか。また、ほとんど黒で部分的に茶などが混ざる「青鹿毛」なども「アオ」(現代風に言えば「クロちゃん」)と呼んでいたらしい。

 

ここでさらに疑問。なんで黒なのに青なの?

これも調べてみたら、見事な黒毛の馬ほど青光りして見えるから、という説に出会いました。

ふ~ん……。まぁ、とりあえずこのへんで納得しといてやらぁ!(←偉そう)

あと、「蒼前」の「前」は神様や貴人を指すとき使う「~の御前」みたいなものらしいです。

 

 白黒つけよう! 結局「蒼前」って何?

 

 つまり、「蒼前」は黒い馬を神格化したもの

やっと答えが出てすっきりしたのも束の間、頭をよぎる何度目かの疑問。

だって神様の馬、御神馬って白のイメージがありません? 白馬は希少だし、白って清廉潔白なイメージもある。なのに黒い馬を神格化ってピンと来ない! 

あと、地方によっては白馬が力尽きたところに蒼前様を祀ったという伝説もあるんだとか。

「蒼前」の「蒼」は黒をあらわしているはずなのに、当の蒼前様は白馬とは、こはいかに。

 

意地になって探ってみると、黒い馬が白くなるという現象を発見しました。葦毛(あしげ)というやつで、生まれたときは黒や灰色の毛並みなのに、年を経るうち徐々に白くなるというもの。

人で言うところの白髪でしょうか? たいていの白馬はこの葦毛だそうで。

つまり、「うちのアオが白くなっちまったよぉ」ってなこともありうる。「蒼前」の「蒼」には黒も白も含まれるんですね。

 

……結論。白黒つけようとしたら、グレーな結果になっちゃいましたw

 

ちなみにこの石碑のあるあたり、昔は険しい峠道で、難所として有名だったそう。今では車が通りすぎるだけの道に、在りし日の面影が……といい話風に終わりかけて、車すら走ってなかったことを思い出しましたww

どっとはらい。