ふしぎーく!

博物館のカエルが語る、民俗系よもやま話

ぼたもちと謎の少女【秩父の怪談 1】

こんにちは、デンカです。

 

私は大学時代、民俗学の口承文芸を学んでいて、中でも伝説や昔話、世間話を集めていました。

と言っても、すんなりおもしろい話を集められるわけもなく……。

調査に伺う地域には前もってごあいさつするんですが、いざ訪れるとやっぱり警戒されました。

ではそんなときどうするか?

「話せるようなことは何もない」と言われたら、「話せるような方、ご存じありませんか?」と聞いてみる。

で、案内されたその家に行ったら「〇〇さんのご紹介で」と教えてくれた方の名前を言うと、かなりの高確率で話が聞ける荒技を編みだしましたw

……ですが、ようく考えてみると、これってその地区に住む人たちが互いのことをよく知り、信頼しているからこそ使える技なんですよね。

お隣に住んでる人すらわからない、そんな状況で「紹介して」と言われても「無理」としか返せませんもん。もしくは勝手に紹介してトラブルになると面倒だからやめようとか。

ご近所づきあいが活発な地域で本当によかったです。

 

調査に行ったのはここ!

 

ちなみにFW(フィールドワーク)に出かけた場所は埼玉県秩父市大滝の落合地区

この地区は深い山の中にあります。埼玉県と山梨県をつなぐ彩甲斐街道というのがあるんですが、その道は荒川の流れに沿って走っていて、お世話になった落合地区は川と道が大きく曲がったあたり。

道の北側に集落があり、川向こうには大滝中学があったのですが、2015年の3月に残念ながら廃校になってしまいました。

 

 

 

日帰り温泉付きの道の駅もあるし、役所の支所もあるので地域の中心的な役割を持つ場所なんですけどね。

そうそう、あるおばあちゃんが「ここは東京で言えば銀座みたいなとこだ」と自慢げに言っていたのがかわいかったです。

心の中で「いやいや、さすがにそれは無茶でしょ!」とツッコミましたが……w でもそうやって地元を誇りたくなる気持ち、すごくよくわかります^^

今回から選りすぐりの怪談、奇譚を紹介したいと思いますが、念のために注意をば。

話者の年齢はFWをした当時のものです。

また、すべての話でご本人の了解を得ており、名前出しもOKということでしたが、あえて仮名にさせていただきました。

――埼玉県は秩父市大滝の落合地区の皆様、その節はお世話になりましたm(_ _)m

 

ぼたもちと謎の少女

 

というわけで、記念すべき第1話目です。

 

【埼玉県秩父市大滝で、77歳のU太郎さんから聞いた話】

3代前の先祖が、お盆の昼過ぎ、盆棚に供えるぼたもちを作っていたときの話。

ふと、家の前を見知らぬ少女が通りかかった。

――どこへ行くのか知らないが、きっとおなかを空かせているに違いない。

そう思ったご先祖は、ぼたもちをひとつ振る舞った。

その日の夕方、激しい夕立が起こり、轟々と逆巻く川に投網を打ったところ、見事な魚が掛かった。よし、これを料理しようと腹を裂いたら、昼間のぼたもちがまるごと出てきたそうだ。

ゾッとなったご先祖は、「こんな魚、気持ち悪くて食えない」と川に捨ててしまったらしい。

 

 ……江戸時代に書かれた奇談集、『耳袋』に出てくる「ウナギと麦飯」みたいなお話です。

起承転結がはっきりある怪談は珍しい。普通はオチなんてないことが多いですからね。