ふしぎーく!

博物館のカエルが語る、民俗系よもやま話

真冬の日暮れに出会った人は【秩父の怪談 2】

この話をしてくれたのは61歳のT子さん。終始にこやかに歯切れのよい話し方をする方でした。

しかも、お父さんが猟師だった関係で山の怖い話を、旦那さんのお仕事の関係で三峯神社に関する不思議な話も知っていて、デンカは大興奮! お会いできて本当によかったです。

……というわけで、今回は雰囲気を出すため怪談調の語り口でいきます!

 

真冬の道で出会った怪

 

山あいの村は日暮れが早い。まして真冬ともなればなおさらだ。夜の帳が降りた山は背後の空よりなお暗く、道の両側からせり出した森はその奥に何かを潜ませているかのように不気味にざわめく。

そんな寂しい道をひとりの男が歩いていた。男は大滝村の役人だったが、その日はどうしたわけか帰りが遅くなってしまったのだ。家は神庭(かにわ)――ヤマトタケルが創建したと伝えられる三峯神社の「神の庭」と伝えられている場所にあり、役場からはだいぶ歩かなくてはならない。

 

 

男が北風に体を丸めながら歩いていると、道の端にひとりの女が立っているのに気がついた。

誰かを待っているのだろうか? だが、見たことのない顔だ……。

しかも、足踏みでもしていないとやりきれない寒さの中を、身じろぎもせずに立っているのだ。

さすがに妖しく思ったが、川に沿って走る道はたったの一本。文字通り逃げ場はない。意を決して近づいていくと、女の背に赤ん坊がいることに気が付いた。白く細い首の後ろから、丸々太った赤ん坊が真っ黒な目でこちらを見ている。

こんな寒い日に赤ん坊を連れ出すなんて。風邪をひかなければよいが……。

そんなことを思いながらいよいよそばを通ろうとすると、女がすっと後ろを向いた。必然的に、背中にいた赤ん坊がよく見える位置になる。

とたん、男は冷や水を浴びせられたような気分になった。なんと、その赤ん坊は何ひとつ身に纏っていなかったのだ。身を切るような寒さの中、泣きもせず素肌をさらしている赤ん坊はひどく不気味で、男はそのまま逃げるように家を目指したという。

 

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(フリーフォトサイト 足成より)

 

T子さん「だから、その親子はキツネが化けていたんだろうって話になったの」

デンカ「どんなに寒くてもキツネなら平気っていう理屈でしょうかね?」

 

……現代ならさしずめ不審者といったところでしょうか?

時代によって解釈が変わってしまうのがおもしろいです。でもやっぱり、裸の赤ん坊をおんぶしている人を見て、「!?」て思っちゃう気持ちは今も昔も同じだろうなぁ……。