ふしぎーく!

博物館のカエルが語る、民俗系よもやま話

手招きする女・切ると祟る木【秩父の怪談 6】

こんにちは、デンカです。

 

かつて私は秩父市大滝の落合地区で伝説や昔話を集めていたのですが、採取した話の舞台は落合ばかりではありませんでした。

話者本人が出かけていって体験したり、もしくは人から聞いた話も当然出てくるわけです。そして、おもしろいことにどの地区が舞台かによって話に偏りがあることがわかってきました。

  

例えば、オイヌサマ(オオカミ)の存在を疑ったら後をつけられたという話。このブログで紹介したものも含め3話ほど集まったのですが、舞台はことごとく大輪(おおわ)

調べてみたらこの大輪、三峯神社の登山道なんです。神様の眷属であるオイヌサマが出るのにふさわしい場所なんですよね。 

また、ちょっとぞっとするような話は落合地区からさらに奥に入った滝の沢という場所に多かったように思います。

といっても、そこで何か特別なことがあったわけではありません。落合地区の人から見て、さらに山深い場所にある=神秘的というのが一番の理由だったような気がします。

てなわけで、滝の沢の怪談をいくつか。

 

山中に佇むモノ2つ

 

【埼玉県秩父市大滝で、61歳のT子さんから聞いた話】 

私の父親がバンドリ(ムササビ)を獲りに、夜の滝の沢山中に分け入ったときのこと。

きれいな女の人が現れて、しきりに手招きしてきたらしいの。

でも、その手は十能(囲炉裏で使うシャベルのような道具)のように大きくて。

それで、掴んでやろうと身を乗り出した瞬間我に返り、足元を見たらあと数歩で崖。

結局、猟をする気も失せて、ひと休みしたあと『人をバカにしやがって……』と悪態をつきながら山から降りてきんだって。

 

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(著作権者:Dddecoさん CC by-sa 3.0  File:Jyuunou.jpg-Wikimediacommons) 

 

……起承転結がきちんとある、典型的な怪談でした。

しかもお父さん、こんな怪しい女の人の手を掴もうとするなんて勇者です! 私だったら硬直しちゃって何もできないだろうなぁ。(ちなみに現在、ムササビ猟は禁止です。おまけに日暮れ以降の猟もダメです)

 

【埼玉県秩父市大滝で、58歳のH男さんから聞いた話】 

滝の沢の塩沢地区には川のそばに大きな樫の木があってさ。切ると不幸になるという噂で、根元には墓石のようなものまであるんだ。

 

ちょっと待って! すでに切られてるんだけど!?

 

この話を聞いたときは、「うっわ、怖い木があるんだなぁ」と慄きつつも、それ以上調べたりはしませんでした。

が……先日ネットで発見! しかももう切られてるっ!?

 

 

落合地区から車で15分ほど。ポイントのある場所は、切った根元を祀った「塩沢望郷広場」になります。(てゆーか、切り株を祀ってもらえるほど有名だったんだ……)

荒川ダム総合管理所のHPの話を総合すると、この木は樹齢が350年以上、幹回り4.1メートルのコナラで、又の名を「切りきれずのナラの木」。

話者は樫の木とおっしゃっていましたが、実際はナラの木。切ると病気になるとされていたようです。

どうして「切りきれず」なんて呼ばれるようになったのか、墓石のようなものは実在していたのかなど、いろいろ不明なところがくやしいです。

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